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ラブレターフロームカナダ

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幸子の日記5

幸子の日記5、第1話、2年後



あれから2年が過ぎた。

力は名前どおりにすくすくと力強く育った。

生まれたときは無かったはずなのに
最近彼の足の裏を見てみると
ちょうど三角形をなすように
3つのホクロができていた。


偶然は全て必然なのだろうか、、

私の手のとどかない
はるか遠い宇宙のかなたで
私にかかわる
全ての物がつながっていることを
確信していた。


私が父の子として生まれてきたこと、
グラントの子供を産んだこと、
ニックと一つになったこと、

私が生まれてくる前から
全ては決まっていたんだ、、、。



色んな荒波を乗り越えて
私は今穏やかな生活をすごしている、、

それも全てあの荒波を超えなければ
見つけられなかったように思える。



全ては必然に起こったこと、、、。








私が力を生む前にコアラちゃんは女の子を産んだ。
そして最近二人目を産んだ、また女の子だった。

ポールが昔言っていた、

「5の倍の10にしよう」

というのは
まんざらジョークではないようだ。

この前3家族で一緒にご飯を食べたとき、

「まだまだ作るぞ!」

と、皆の前で再び子作り宣言をしていた。
その横に座っているコアラちゃんは
幸せそうだった。




ウサギちゃんはやっとマイクと結婚する
決心をしたらしい、
来月の式に向けて
毎日ウエディングドレスやら色んな準備の追われていた。

あのマイクもやっと年貢の納め時がきたようだ。

私が彼に初めて会ったとき、彼は40歳だった。
それが5年前、
彼はもう45歳になろうとしている。

頭の地肌も少しづつ広がりを見せていて、
すこし昔より老けた感じがしていた。



私とニックは、
彼女達の式が終れば、
日本に帰る予定をしていた。

まだ力を私の家族に見せていなかったので、
お披露目のため、帰る予定だった。

そしてその後は
3人で京都旅行も計画していた。



年々グラントに似てくる力を愛しいと思っていた。
そう、
私はまだ彼を忘れられずにいたのだ。



京都にどうしても行きたかった。

行って自分の目で何かを確かめたかった。

第2話、勝ち負け


ウサギちゃんの結婚式が終り、

ニックと力の3人で日本に帰った。


私の母はたいそう喜んでいた。

かわいい力を抱きしめながら、
泣いていた。

そして、
男前で誠実なニックを一目見て気に入った。


母は力を抱いたまま、
仏壇の部屋へ行き、
父の前に座った。


「お父さん、これが力だよ、あなたの孫ですよ、、、
こんなにかわいい、、それに、幸子がやっとマイクを連れて帰ってきたよ、、
あなたの会いたがっていたマイクを、、」


そういってタオルに顔を押し当てて泣いていた。

その光景を後ろから、
ニックと二人眺めていた。

ニックが日本語を出来ないことに対して
かなり安堵していた。




その週末、
私は、待ちかねていたように、
友達に会う約束を入れた。
私を「負け犬幸子」と影で呼んでいた友達だった。


負け犬幸子が勝ち組に入ったのを見て欲しかった。



男前のニックとハーフの子供を見て、
皆はため息を漏らさんばかりの声で
私に話しかけてきた。

彼女達の反応は私が想像していた以上のものだった。


「ねえ、今度子供と二人親子留学したいんだけど、、
幸子にお願いしていい?」

「将来、家の娘と結婚させてよ、、」

「ねね、ニックと写真とってもいい?」


彼女達のそんな姿を見ても
私の状況は何も変わらなかった。

彼らを見返したところで
私の幸せがもっと増えるわけでもない、
不幸になるわけでもない、
彼女達が幸せになるわけでもなかった。

それどころか、
こんなちっぽけな見栄のために
私はカナダに来たのかと思うと、
自分の馬鹿さ加減にもあきれかけていた。


でもその意地と見栄があったからこそ、
すごいエネルギーを使って
カナダで生き抜いたのだ。

「感謝しないと罰が当たるね、、、」



そう心でつぶやきながら、
幸せいっぱいの笑顔を
彼女達に振りまいた。

第3話、人



次の週に、
3人で京都旅行にでかけた。

私は大学が京都だったということもあり、
その町を知り尽くしていたが、
ニックは初めてだということで
最初の日は全てを観光にあてて
メインの観光地を色々案内してあげた。


真夏の8月という暑さは
カナダの白熊ニックには少々きつかったのか
休憩ばかりしたがっていた。

京都は盆地だけあり、
冬は寒く夏は暑い、、
日本人の私でさえ
京都の夏は暑すぎていた。

そんな暑さの中でも、
ニックは力を大事そうにおぶり、
力もそんな父親を大好きだったらしい、
ニックの後を金魚の糞のようにどこまでも追っていった。

どこから見ても本当の親子のようだった。


もしニックが私に結婚を申し出てくれなければ
力は居なかった、、
それに今のこの幸せも無かったはずだ。

彼は何の迷いもなく、この何事にも変えがたい宝物を私たちにくれた。




3人で先斗町のカキ氷やさんに入った。
私が学生時代にはまっていた
宇治ミルク金時をニックに食べさせてあげたかったからだ。



「うわ~、この豆甘すぎる、、、」


そういいながら金時をスプーンでどけては
下にある宇治とミルクばかりを食べていた。

力は金時を気に入ったのか、ニックのどけた金時を
指でつまんでは
自分の口に運んでいた。






遠い昔、小学校の一年の時に習った
「人」
という字を思い出していた。


「人と言う字は誰かが誰かを支えているって形になるんですね、、、」


先生が両手が人と言う字を作りながら
説明していた。

当時6歳だった私には
そんな「支えあう」意味など分かるはずもなかった。




支えあう、、


私はニックに支えられていた。
そして私も自分のこれからの人生を彼のために使い
彼を支えていくと決めた。



30年も前に先生に教えてもらった言葉の意味を、

今やっと理解できた。




第4話、時空旅行



ニックはこの暑さのため、
ホテルに一度戻って休むと言い出した。
当然のごとく
力もニックに着いていくと言う。

私はもう少しだけ4条を歩きたいと言い、
一人残ることにした。

ニックと力が帰ってくれて
ちょうど都合がよかった。


私のポッケには
グラントが私のために着物を買ってくれたお店の名前と住所があった。


ニックと別れた後、
私はなんの躊躇いも無く
そのお店の住所めがけて歩き出した。


四条川原町近くにあるその呉服屋は、
かなりふるい建物の中にあり、
中には年配の女性が一人居た。


最初は中に入っていくのを躊躇していて、
しばらくの間、
外からショーウインドーを覗いていた。

ショーウインドーに飾られていた着物は
同じ職人さんによって描かれたものなのだろうか、
グラントにもらった私の物と良く似ていた。



「これ、ええどすやろ、、京都の室町から取り寄せて
仕立て上げたんどす、、
ピンクと赤が艶やかで
若い人向きですな、、、
お嬢さんに似合いそうですわ、、」

中に居た店員が
店の外にやってきた。



「ええ、素敵な柄ですね、、、、
私、これとよく似た着物持ってるんです、、」


「へえ~、どんな柄どすか?」

「これと良く似た図案なんですけど、地が水色なんです、、、
多分、この店で買ったものだと思います」


「水色ねえ、、、」

「もう5年ぐらい前の話ですけど、」

「5年前ねえ、、、」

「白人の男性で、グラントっていう名前なんですが、、
多分電話か何かで注文したと思うんですが、」


この暑さの中
西陣織を着たその上品は女性は
頬に手をついて考え始めていた。

年のころは50過ぎたぐらいだろうか。


「あ、おもいだしましたわ、グラントさんでっしゃろ、、
あ~思い出したわ~」

両手を小さく広げ、
その女性は、
彼を思い出したことを無邪気に喜んでいた。

そしてまじまじと私を見つめた。

「グラントさん、こんな若いお嬢さんにプレゼントしはってんね~」


それを言った後、

「グラントさん元気にしてはります?
いやあ、久しぶりにあの人から着物の注文があってね、
その後おばあちゃんとグラントさんの話をずっとしてたんどす、、、」


「彼の話って?」

「いやあ、私よりおばあちゃんの方が詳しいんどすけどな、
今ちょっと体調悪くて寝込んでいますのんやわ、、」


彼女はしばらく空を見つめていた。


「よかったら中で冷たいお茶でもめしあがりますか?」



私はその女性の言葉に甘え
店の中に入った。




グラントがかつて座ったかもしれない
椅子に腰掛けて


遠い過去の話を聞き始めていた。

第5話、彼女の幸せ



「あの、失礼ですけど、グラントさんとは、、、」


椅子に腰掛けると、
その女性は唐突に聞いてきた。
彼とあまり親しくない人に
色んな話をしたくなかったのだろうか。。


「ええ、あの、親しい友人です、

ただ、
彼からいただいた着物がとても素敵で、
その、
それを売っていたお店を一度訪ねてみたかったんです、、

それに、昔、彼がここで色んな着物を買った話を聞いて、、
どんなものがあるのか
見てみたくって、、、
本当に素敵な柄ばかりですよね、、、」



私の最後の台詞

「本当に素敵な柄ばかりですよね、、」

で、気をよくしたのか、
その女性は二コリと笑い、
話し始めた。


「私はまだ10歳ぐらいやったから、あまり覚えてませんねんけど、
おばあちゃんが色々言ってましたわ、、、


ここの商店街の奥にね、昔で言うスナックみたいなところがあってんよ、
そこのママさんとよく来てたらしいですわ、、、」



今から40年も前に
グラントは、たまたま立ち寄ったそのスナックで
その女性と出合ったらしい。

彼はここにその女性と何度か来ていた。


「さゆりさん、って名乗ってはったと思いますわ、、
色の白い綺麗なひとやったんどすけど、
いつみてもちょっと暗い顔してはってねえ、、

彼女が帰った後、おばあちゃんがいつも心配してたのを
覚えてますわ、、、」


実際彼女は幸せではなかったらしい。


「さゆりさんってね、旦那さんが居はってんやわ、、
そのお店もその旦那さんが買ってあげたとかおばあちゃんは言うてたけどねえ、、

そやそや、この2件先、普通の喫茶店になってしもてんねんけど、
昔は人形屋さんでな、
そこの奥さんが、その旦那さん一度見た、とか言うてたわ、、
なんかすごい不細工なひとやったらしくて、
ようあんな人と一緒に居れるわ~って顔しかめながら
話してはったわ、、」


さゆりとグラントは一緒に日向を歩けない関係だった。
さゆりには旦那が居た。
東の方の成金らしく
金遣いは荒く、さゆり以外にもたくさんの女性がいたらしい。


「そんなんでね、さゆりさんとグラントさん、一緒に来るときは
こそこそしながら来てはったわ、、
みんな暗黙の了解でね、
だれも何も言いませんでしたけど、、

旦那さんにばれないようにしてはってんね、、、」


その女性は再び空を見つめた。


「それからしばらくして、そのスナックが売りに出てんやわ、、
さゆりさんもそのお店と同時期におらんようになってね、、
そのすぐ後やわ、グラントさんがさゆりさんの行方をこの商店街中に
聞きに回ってたんわ、、、」


さゆりはそのまま姿をくらまし、
二度とこの町には戻ってこなかったと言う。

皆は口々に噂をし、彼女のその後を見たという者も現れた。
ちょっとした町内ゴシップだったのだろうか。



「その後、色々噂が流れてね、彼女は殺された、とか、
あと、大阪の今里の女郎屋で見た、とか、、いや、旦那さんの家の牢屋に
入れられてんやわ、、とか、、

どれがほんまがわかりませんけどね、、、
ただの噂ですわ、、」



その後もグラントはずっと探していたが、
結局見つからず
一人カナダに帰ったという。


「帰る最後の日にまたこの店に来てね、
カナダの住所置いて帰りはってんやわ、、、
彼女を見たらすぐに連絡して欲しいってね、、
グラントさんも本気やってんね、、」


その後も彼は年に1,2回、手紙をこの呉服屋に送っていたらしい。
そのほとんどが彼女に関するものだったという。
その手紙も5,6年前を最後に途絶えていた。



「さゆりさん、どこ行きはってんやろうね、、」



再び彼女は空を見つめた。




グラントは、さゆりという女性を40年もの間探し続けていた。
その彼の切ない恋の物語は、
私と出会い、方向を変えても
なおも彼女の姿を追い求めていた。






「彼は天国でさゆりさんに会えただろうか?」

そんなことを考えながら
深く深呼吸した。

第6話、渡月橋



次の日、
ニックと力を連れて
嵐山の方へ出かけた。

観光客でにぎわうメインの場所の奥に
ガイドブックには載っていない
豆腐をメイン食材としたレストランへ
行きたかったからだ。

夏だということで
湯豆腐ではなく
冷たいお豆腐料理のコースだった、

日ごろから豆腐が大好きなニックは
嬉しそうに全てを平らげた。

それを力も真似するように
沢山の豆腐を食べていた。

力はニックを信じていた。

彼の全てが力にとってはお手本であり
正しいことなのであろう、何にするにせよ、
力は
ニックの真似をしていた。


3人で昼食を終えた後、
お土産やさんまで戻り
抹茶アイスクリームを買った。

そしてそのまま私たちは
他の観光客同様、
渡月橋へと向かった。

嵐山の桂川にかかる
全長250メートルもの長い長い橋だった。

きっとグラントもあのさゆりさんと渡ったに違いない
その橋を
ニックと力とともに渡った。




ちょうど渡りきったところだった、


「ねね、ニック、知ってる?
この橋ってね、恋人同士の橋って呼ばれていて、
愛する二人がこの橋を一緒に渡って、また同じ橋を
引き返すと別れるってジンクスがあるんだよ、、、」


私は少し悪戯っぽい目でニックを見つめた。


「本当かどうか試してみる?」


ニックは少しあわてた様子で


「そんなもの試さなくていいよ、、」

そう言いながら、
力をおぶったまま
私の手を強くひっぱった。



ニックに強く引っ張られながら
後ろを振り返り
渡月橋がどんどん小さくなっていくのを見ていた。






「もう幸子は、、、僕はあの橋を渡ろうが何をしようが
別れないから、、」


少しすねたようにニックが言った言葉が
なんだか嬉しかった。



再び渡月橋をニックの肩越しに見ていた。

「あれ?」

私は目をこすり、もう一度見てみた。

「どうしたの?」

私がびっくりしながら渡月橋をみていたので
ニックがすこし不安げに聞いてきた。




遠くから、

京友禅の着物を着たさゆりとグラントが
渡っているのが見えたのだ。

水色の地に菊の花が飛び散った絵柄の着物は
人ごみの中、
目立っていた。
丁度二人は
渡りきったところだった。

二人は向かい合い、
グラントは彼女のかんざしを整えた。

そして、


再び橋を戻っていった。



「どうしたの?何が見えたの?」

ニックがもう一度聞いてきた。


「ううん、ちょっと知った人に似た人がいたんだけど、、、


違ったみたい、、、」




40年まえの出来事は
時を超えて

私の前に姿を現していた。

最終話、幸せの形



日本から帰ってきて一ヶ月がたっていた。

昨日ブルーから久しぶりの手紙が届いた。

東京に小さい事務所を開いたらしく
そのことを知らせる為のものだった。

仕事も順調とはまだいえないが、
写真で食べていけるようになった
小さな成功を彼女は喜んでいた。

女性のヌードを綺麗に撮らせれ

ブルーをおいて右に出るものはいない

と世間が言うまで頑張るらしい、
あの頑張り屋の彼女なら
果たせない夢ではないように思えていた。





私たちのカフェもやっと一段落したので、
私は、
ニックに変わってカフェに行くことがたまにあった。

固定客も増えていき
売り上げも伸びていた。

ビクトリアのカフェも
内装を綺麗にしてから客も増えていった。

全ては順調に進んでいた。


ニックは私を信頼し、
彼のビジネスに私の提案を採用することが多々あった。

その提案の一つに日本人採用があった。
中で働く従業員の半分は日本人にしていたのだ。


日本人はカナダ人に比べ、時間に正確で言ったことを
きっちりするし、嘘が無く信頼しやすかった。




今日もカフェに行くと、
日本人の女の子が一人入っていた。
今年の6月から働き出した子だった。

女の子といえど、
私より2つぐらい下だろうか、
33歳を過ぎた彼女はワーホリは取れなかったらしく
学生ビザでカナダに来ていた。

ただ、英語の勉強だけでは物足らず、ボランティアでもいいので
雇って欲しいと言った勢いに負けて
今は働いてもらっている。

彼女はかなりまじめで一生懸命働いていた、
ただではかわいそうと思い、
店のチップとアンダーテーブルでいくらか渡そうとしたが
断られた。
彼女いわく、違法だから受け取れないらしい。

それに
33歳まで独身で、家から会社に通っていれば
いくら出費癖があろうとお金は貯まるらしい、
彼女も3年間は何不自由なく暮らせるぐらいの貯金を持って
カナダに来たと言う、、、

どこかで聞いたような話だと
思いながら彼女の身の上話を聞いていた。




昼のラッシュも終え、
客も少なくなってきていた。
店には私と彼女だけだった。



「いいな~幸子さんは、、、」

彼女が唐突にいいだした。

「え?何が?」

「だってえ、かわいい力ちゃん
と男前の旦那様、はあ~~
それにこのカフェだって持ってる、、、いいなあ、
私の夢ですよ、夢!」



彼女はそう言った後、
ガラスケースにもたれながら
外の通りを再び眺めていた。


「どうしたら幸子さんみたいに
なれるのかな、、
私の欲しいもの全部持っていて、幸せそうで、、

あ~私もカッコいい彼氏が欲しいいいいいい!」

彼女のいつもの癖は、
興奮すると、唸るように話し出すのだ。
その癖が今顔を出そうとしていた。


「いつかできるわよ、大丈夫よ」


と、根拠の無い励ましのような言葉を彼女に言って、
話を変えようとしていた、
このままの状態では彼女はもっと興奮するだろうと思ったからだ。



「本当かな、、いつかなれるのかな、、」

そして、励ますと
すぐに素直におとなしくなる、これも彼女の癖だった。

彼女は生まれてから今の今まで男性と付き合ったことが無いと言う、
キスはおろか手もつないだこともないらしい。
33歳になった今、それを人に言うのが恥ずかしく、
処女じゃない遊んでいる女の振りをよくしていると
彼女は教えてくれた。




「あ、そうだ、幸子さんがカナ
ダに来てから今に至るまでの話を
聞いてみた~い!!」

「そうねえ、、、、」

そう答えながら自分の幸せとは何かを考えていた。


「お願いします!参考にしたい
いいいい!」


しばらく考える振りをした。


「じゃ、また今度ね、話せば長
くなるしね、、」


「え、話せば長くなるって、何
かあったんですかあ?
そんな話し方されるともっと聞きたい!」

無邪気に聞いてくる彼女にウインクを投げながら
私はこう答えた。


「色々とね、、」


この“色々”の中に
私の6年間が詰まっていた。


幸せとは、

もう一度自分に問いただしてみた。


この6年間の格闘で
見えてきた
私の幸せの形とは、

一番愛した男性の子を身ごもり、
そして
私を一番愛してくれる男性と添い遂げることなのだろうか、、、

ニックには悪いと思いながらも
そんなことを考えていた。






まだ話し続けている彼女に目をそむけ
外を見た。




もう9月なのに
まだまだ青い空が広がっていた。


あの日あの時に見た
同じ
バンクーバーの空だった。



                           終わり

               「鬼のパンティ、道子の日記」へ続く



                      
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